新製品の開発事例
ひと目で魅せるこの貫禄。革の黒ダイヤこと
「姫路黒桟革」製ボディバッグで風格を纏う
坂本商店
2020年11月2日~11月29日
800,000円
935,000円(116%)
姫路市花田で1924年に創業し、黒桟革(くろざんがわ)を専門に生産している。
黒桟革とは、姫路独特の白なめしと漆塗りの2つの伝統技法を組み合わせた革製品である。革表面のシボ(シワ模様)の凸部分にのみ漆を塗り、室(むろ)と呼ばれる乾燥室で48時間かけて温度と湿度を管理する。漆塗りと乾燥を10回以上繰り返し、下地作りから約3カ月かけて1枚の黒桟革が完成する。
古くは戦国武将の甲冑に使われた装飾で、ダイヤの粒を無数にちりばめたような光沢を放つ、世界でも類を見ない伝統技法である。坂本商店は、なめしから漆塗りまで一貫生産できる日本唯一、つまり世界唯一の工房である。
現代では剣道の防具に用途が限られるようになっていたが、2000年代に入ってから当社3代目の坂本弘氏が、およそ10年間かけてヨーロッパを中心にファッション業界での用途開発に取り組んできた。フランスや香港で開催される世界の主要な展示会で表彰されるなど、ファッション業界での認知を高めつつある。
これまでの販路開拓は、ファッション系展示会を通じて世界の高級ブランドに向けて革素材として発信してきた。坂本商店では1枚1枚時間をかけて加工するため、黒桟革の生産量は、全国のタンナーの平均生産量と比較すると20分の1程度しか生産できない。さらに国内唯一の工房ということもあり、まだまだ限られた人にしか黒桟革の存在を知られていなかった。
2019年に子息の坂本悠氏が入社したことをきっかけに、自社のオリジナル商品の開発をスタートし、黒桟革の認知度向上を模索していた。
そんな矢先に新型コロナウイルスの感染拡大により、販路開拓の中心である展示会の多くが中止や規模縮小となり、自社製品のPRの場が激減してしまった。しかし、このピンチに立ち止まることなく、商品開発に専念できるチャンスと捉え、悠氏が中心となり当社初のオリジナル商品となるボディバッグを開発。クラウドファンディングの情報発信力や、伝統産業への関心が高いMakuakeの特徴に期待してプロジェクトを実施した。
当社は従来、製造卸の立場のため、流通の中で最終製品の価格が決まっていた。今回のボディバッグの価格が、今後の新商品ラインナップにおける価格帯の指標となるため、その価格設定を迷った。
職人の感覚としてこれまでは、質のいいものを安く売ることが良い事だと考えていた。そこで当初は、収益性が厳しくともギリギリまで安く販売できる価格を検討していた。
しかしプロジェクトの打ち合わせを進める中で、「黒桟革にはどれだけの技能や歴史、誇りが詰まっているのか」という、これまで意識の根底にあった見えざる資産が明らかになってきた。また黒桟革は、自分たちにしかできない仕事であり、尚且つ売れるからといってすぐに増産できる製法でもない。
これらを総合的に判断し、坂本商店で働く人が10年先、20年先に幸せになるために、「自分が本当に売りたい値段はいくらか?」考えた抜いた末に、ボディバッグ1個85,000円(消費税込み)という販売価格を決定した。
カバンの価格としてもMakuakeの他のプロジェクトと比較しても、かなり強気な価格設定のため、プロジェクトが始まる前は不安も大きかった。それでも、自分たちの価値を分かってくれるお客さんとの出会いを信じて「価値を伝える努力」を追求した。
黒桟革を知らないMakuakeユーザーにとっては、知らない物の値段が高いか安いか判断できない。そこで、プロジェクトページを通じて、お客さんに黒桟革を体験してもえるような構成を目指した。
なぜ値段が高いのかを理解してもらうには、製法の説明が不可欠である。ただし、それだけでは作り手目線の押しつけになってしまうため、黒桟革の使用シーンを想像した。戦国武将が黒桟革の甲冑をまとうことの意味。電気照明のない戦国時代の夜、ほの暗い灯火に浮かび上がる黒桟革の鎧。炎のゆらめきに合わせて煌めく無数の漆の粒。
貫禄、自信、格調といったキーワードが連想された。現代生活において、戦国武将の気持ちで黒桟革を身にまといたくなるシーンを想像できる文章や写真の表現を心掛けた。
製造卸に特化していた当社にとって、新商品開発を通じてエンドユーザーと直接やり取りできた経験は勉強になった。今後の商品開発や接客対応に活かしていきたい。
また、1つのプロジェクトが終了したが、定期的に新商品をリリースしていくには開発資金が必要なため、適正な価格設定の大切さを改めて実感している。
なにより今回のプロジェクトで、自分の製品に価格をつけて流通させることができたという実績が自信になった。応援購入してくれた11人は、黒桟革に価値を感じてくれた大切なお客さんである。今後もファン層のお客さんとコミュニケーションを取りながら新商品のアイデアを膨らませていきたい。
家族経営の工房なので人手は限られているが、長期的な経営を意識して、今できることから情報発信のデジタル化に取り組んでいこうと思う。ホームページやブログ、YouTube、SNSといったWEBツールを組み合わせて、小規模事業者でも発信できる自社メディアについて研究していきたい。
クラウドファンディングを実施して、高品質なものを作るだけでなく、情報を伝えること、お客さんに知ってもらう事の大切さが分かった。新商品の開発計画をスケジューリングして、計画的な情報発信を継続していきたい。
初めてのオリジナル商品は、黒桟革の特長を知ってもらうため、黒桟革の使用面積が大きいボディバッグを開発した。次回は、価格的にも購入しやすい小物類なども開発していきたい。
坂本商店の黒桟革は、老舗高級ブランドのバッグや高級車の内装などに使用されているが、知名度は低い。知名度をより高め普及させるために、自社ブランドを立ち上げたい。
内容は違えど、多くの企業が一度は検討したことがあるのではないでしょうか。
安価な海外製品に押され、消えゆく日本古来の伝統技術。長きにわたり、受け継がれてきた技術に対する価値を感じていただきたい。しかし、そもそもなぜ姫路黒桟革を身に纏うのか。希少価値の高い姫路黒桟革を残す意義とは。自信を持って高く売る。必要とされる方に届ける。それらを追求した構成を考えました。
坂本商店の黒桟革は、老舗高級ブランドのバッグや高級車の内装などに使用されているが、知名度は低い。知名度をより高め普及させるために、自社ブランドを立ち上げたい。
内容は違えど、多くの企業が一度は検討したことがあるのではないでしょうか。
安価な海外製品に押され、消えゆく日本古来の伝統技術。長きにわたり、受け継がれてきた技術に対する価値を感じていただきたい。しかし、そもそもなぜ姫路黒桟革を身に纏うのか。希少価値の高い姫路黒桟革を残す意義とは。自信を持って高く売る。必要とされる方に届ける。それらを追求した構成を考えました。
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