新製品の開発事例
こはぜで留める安心感。手首の疲れを緩和する「リストウェア」でデスクワークを快適に
株式会社青山産業研究所
2019年2月28日~4月26日
80,000円
1,071,780円(1339%)
大正8年(1919年)に創業して今年で100周年となる当社だが、その歩みは決して順風満帆なものではなかった。
「こはぜ」とは、足袋や、職人が使う手甲などに用いられる日本の伝統的な留め具であるが、和装の需要が減るとともに、こはぜの需要も減少している。業界全体が縮小する中においても、当社では緻密なデザインを表現できる刻印や、適度なたわみを持たせる成型など、業界トップクラスの技術向上を続けることで経営を維持してきた。
近年では、こはぜの海外展開にも積極的に活動している。
ヨーロッパや北米などのファッションブランドからこはぜの注文が来るなど、これまでの取り組みが実を結びつつある。
着物を始めとする和服を着る機会が減り、日本国内でもこはぜを知らない人が増えてきた。当社では、こはぜの新たな需要を開拓するために、今のライフスタイルにあった使い方を提案したいと思っていた。そうした中、長時間のパソコン作業による手首の痛みなどに悩む人が増えていると聞き、「手甲」が活かせるのではないかと考えた。
手甲とは、大工さんなど日本の職人さんが手首の保護のために使うワークウェアで、その留め具としてこはぜが使われている。手甲を応用することで、パソコン作業の負担を軽減するリストウェアになるのではないかと思い、試作開発に取り組んだ。
また、手甲は外国の方に好評なので、国内にとどまらず海外のユーザーにも提案できると期待している。
「今までこはぜを使ったことがない人にも使ってもらえるように」という目的が先行しすぎたため、当初はデザイン性重視でマラソン用のリストバンドに「こはぜの装飾」を付けるというアイデアが出てきた。しかし、機能性重視のスポーツウェア業界において、従来のリストバンドとの差別化ができないとデザインだけではマラソンランナーは欲しいと思わないだろう。
そこで、こはぜ本来の機能性を再発見しようとしたが、案外これが大変だった。製造者の自分たちがあまりにも知り得ているものなので、どこに価値があるのか、こはぜのどんなところがいいのか、自分からは出てきにくい。
そこで「和装が好きで足袋を履く機会が多い人」、「こはぜの実物を初めて見る人」といった外部のメンバーにも入ってもらいブレーンストーミングを行った。もともとこはぜが何に使われているのかを掘り下げることで、こはぜの留め具としての価値を再発見しようと試みた。
会議の結果、他の留め具と比較して次のようなこはぜ独自の機能が見つかった。
・留めやすくて外れにくい。
・こはぜを留めた時に、程よく締まるフィット感。
・現場作業のハードな使用環境で選ばれる耐久性の高さ。
さらに、現場作業用のワークウェアであり、ほとんどの人が知らない「手甲」を別のシーンで使えばどうなるかアイデア出しをした結果、普段こはぜを使わない人の視点から「パソコン作業時の手首の保護になるのでは」という発案にたどり着いた。
続けて普段から和装が好きな人の視点から、「足袋を履く時にこはぜを一つずつ留める所作が精神統一になる。この一手間が仕事のオンオフの気持ちの切り替えになるのでは」との感想が出た。
ここに、現代のライフスタイルに合わせたこはぜの新用途として、「パソコン作業用のリストウェア」が誕生した。
今回のプロジェクトは、スタート初日から非常に多くの支援や応援コメントをいただけた。そしてプロジェクトページが賑わうことで、新たな支援者を更に呼び込むきっかけになっている。今までのパソコン用のアームレストでは悩みが解消しなかった人たちに新しい提案ができ、眠っているニーズを掘り起こせたのだろう。
正直なところ、ここまで支援していただけるとは想像していなかった。逆に、潜在的なニーズ喚起を狙いすぎてもうまくいかないことも多いだろう。
このように、新たな発想から生まれた試作品を低予算で発表することができ、そして市場の反応を確かめられるところにクラウドファンディングの良さがあるのだと思う。クラウドファンディングを通じて、普段こはぜを使わない人たちに、こはぜの魅力を発信することができた。そして、支援者からいただいたコメントの中から、今後の事業展開につながる要素を見つけたい。
プロジェクトの成功が、本当の意味でのスタートだと考えている。この商品が届いた後に支援者の皆様からどんな感想が聞けるのか、期待もあるし不安もある。その声を次に生かしていきたい。 また、クラウドファンディングとは、自社のことを全く知らない新しいお客様への情報発信なので、このプロジェクトページには新商品の魅力だけでなく自社の紹介や、日本の伝統産業であるこはぜへの想いなど、自分たちが伝えたいことすべてが1ページに簡潔に表現されている。このページをそのまま英語に翻訳して、当社が注力している海外への販路開拓にも積極的に使っていきたい。
プロジェクト実施者は自社商品、技術を知ってほしいと思うのが常です。しかし「こはぜを知っていますか?」この問いに対して答えられた方は1割もいませんでした。また知らなくても生活できています。これがプロジェクト実施者と支援者の熱量の差となります。
一方的な熱い想いは、時として疎まれる原因にもなり得ると考えています。そうならないよう、支援者が必要とする商品の魅力を訴求しつつ、それらを解決しているのはこはぜであるといった構成にしました。
プロジェクト実施者は自社商品、技術を知ってほしいと思うのが常です。しかし「こはぜを知っていますか?」この問いに対して答えられた方は1割もいませんでした。また知らなくても生活できています。これがプロジェクト実施者と支援者の熱量の差となります。
一方的な熱い想いは、時として疎まれる原因にもなり得ると考えています。そうならないよう、支援者が必要とする商品魅力を訴求しつつ、それらを解決しているのはこはぜであるといった構成にしました。
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